序文/展示室3 『神記憶』~私を受け止め明日へと導く風と雲と空の道~
私は、目に見えない、氣配のようなものに心
を惹かれます。自然のなかに身を置き、心身
を整えると、微かな波動に氣持ちが反応する
のです。
深山に響く獣の鳴き声。川面を漂う朝霧。
空を流れる雲。木々の葉を歌わせる風。
照らす月光。射し込む陽光。
ふとした一瞬の出合いに、私はシャッターを
切ります。
撮影をしている間に、私の心の扉が開き、内
なる記憶が何かと呼応し、生きる力が湧いて
くるのです。生かされている。その実感に包
まれながら、この喜びを伝えなければと思う
のです。
慌ただしい日常のなかで、ふと足を止め、呼吸を整え、
あなたの心も感じ取ってくれることを祈っています。
形も確かではない、風や雲や空の道を。
そこに宿り、そこから放たれる、大いなる生きる力『神記憶』を。
写真家 齊藤文護
作品集『神記憶』巻頭文より